腸から異物が体内に漏れ出す?リーキーガット症候群とは

Share
腸から異物が体内に漏れ出す?リーキーガット症候群とは

日々の食事から栄養を吸収する大切な臓器「小腸」。

しかしこの小腸で炎症が続くと、細胞同士の結合が緩み、腸を通る異物が体内へ漏れ出してしまうことがある、というのはご存知でしょうか?

この「腸が漏れやすい(leaky gut)」状態から名付けられたのが リーキーガット症候群
近年、さまざまな不調や疾患と関連があるのではと注目されています。

今回は、このリーキーガット症候群について詳しく解説していきます。

腸の役割と「バリア機能」

腸内には約100兆個の腸内細菌が存在し、これは重さに換算すると約1.5kgあるといわれています。そしてこれはなんと人間の脳と同じ重さ。

また腸には「腸管神経系」という独自の神経系があることから、腸は第二の脳といわれています。

この腸は栄養素を吸収する働きをもつ一方で、異物や病原体を体内に入れないようにブロックするバリア機能を持っています。

つまり腸は、腸内を流れる物質の中から栄養素は吸収しつつも、異物や病原体はむしろ体に入ってこないようにバリアを張る、という機能を同時に担っているのです。

この栄養素のみを選択的に吸収する機能を選択的透過性といいます。

この腸のバリア機能は以下の3つで構成されています。

  • 上皮細胞
  • 腸内細菌
  • 粘液層

特に小腸の上皮細胞は「タイトジャンクション」という細胞間結合を形成し、異物の侵入を防ぐ役割の中心を担っています。

しかし、このタイトジャンクションが緩んでしまうと、未消化のタンパク質や毒素、病原体が腸から血液中へ漏れ出し、全身の炎症やさまざまな症状につながるのです。

リーキーガット症候群の症状

腸のバリア機能が壊れると、次のような不調が現れるとされています。

  • 下痢や便通異常
  • 記憶力や集中力の低下
  • 栄養吸収の低下による慢性疲労、肌荒れ、皮膚炎
  • 自己免疫疾患(関節リウマチ、炎症性腸疾患、甲状腺疾患など)

「なんとなく不調が続く」「原因がはっきりしない体の不具合がある」と感じる方は、このリーキーガット症候群が背景にある可能性も否定できません。

リーキーガット症候群を引き起こす原因

腸のバリア機能を損なう要因には、以下のようなものが考えられています。

  • 食品添加物
    • 一部の食品添加物で、腸管の炎症を引き起こす可能性が報告されています。
  • 糖の過剰摂取
    • 糖を多く摂ると腸内細菌叢のバランスが乱れ、炎症と関連する可能性が報告されています。
  • グルテン
    • ゾヌリンの分泌を促進してタイトジャンクションを緩める可能性が報告されています。
  • 乳製品
    • 乳糖やカゼインが人によっては、未消化のまま腸に達して腸内の炎症を誘発する可能性が報告されています。
  • 抗生物質
    • 腸内環境の乱れを誘発することで腸内の炎症にうながる可能性が報告されています。
  • アルコール
    • 過剰なアルコール摂取は腸管透過性の上昇する可能性が報告されています。
  • ストレス
    • 自律神経の乱れが消化機能の低下や腸壁の脆弱化を引き起こし、腸のバリア機能に影響を与える可能性が報告されています。

特に日本人はグルテンや乳糖を分解する酵素活性が低い人が多いため、未消化のまま腸にたどり着くことで、腸に負担がかかりやすい点にも注意が必要です。

(ただしこれには個人差あり。詳しくは以下の記事でまとめています。)

グルテンとは?健康への影響とその向き合い方
パンのもちっとした食感、ラーメンのコシ、ケーキのしっとり感。 私たちの食卓に日々登場する小麦製品の美味しさを支えている成分がこの「グルテン」です。 近年では、グルテンの体への悪影響や「グルテンフリー」という言葉を良く耳にするようになりました。 本記事では、グルテンの基本情報から、日本人に起こりやすい不調の背景、そして賢く付き合う方法について書いていきます。 1. 概要と基本情報 グルテン(Gulten)は、小麦、ライ麦、大麦などに含まれるたんぱく質の総称で、グリアジンとグルテニンという2種類が水と混ざることで網目構造を形成します。 この網目状のグルテン構造が、パンの膨らみや麺のコシといった特徴的な食感を生み出します。 * グリアジン(Gliadin):生地を伸びやすくする粘性を与える * グルテニン(Glutenin):弾力や噛みごたえを与える この組み合わせが、パンや麺に欠かせない食感と構造を作りますが、同時に消化しづらい性質を持つため、特定の人にとっては健康リスクにもなり得ます。 2. 体質・遺伝的背景 グルテンへの耐性は人によって大きく異なり、その差は
乳糖(ラクトース)とは? 健康への影響とその向き合い方
牛乳やチーズ、ヨーグルトといった乳製品。 ”健康のために” と摂取しているつもりが、「牛乳を飲むとお腹がゴロゴロする」「ヨーグルトでお腹が張る」といった経験はないでしょうか? それはもしかすると「乳糖(ラクトース)」が原因かもしれません。 本記事では、乳糖とは何か、体質や遺伝との関係、どんな不調を引き起こすのか、日本人が注意すべき理由、そして乳糖と上手に付き合う方法をご紹介します。 1. 概要と基本情報 乳糖(lactose)は、母乳や牛乳に多く含まれる二糖類で、ガラクトースとグルコースという糖が結びついてできています。 牛乳の甘さをイメージすると分かりやすいと思いますが、砂糖のような強い甘さではなく、優しい甘みが特徴です。 * グルコース(Glucose):脳や筋肉の主要なエネルギー源となる単糖類 * ガラクトース(Galactose):体内でグルコースまで変換される単糖類 消化には、小腸上皮で働くラクターゼ(乳糖分解酵素)が必要で、これが不足すると乳糖を消化できず、大腸での発酵を経てさまざまな症状を引き起こします。 2. 体質・遺伝的背景 乳糖を体内で分

腸のバリア機能を修復するには?

リーキーガット症候群は「食事」と「生活習慣」の両面からケアすることが大切です。

食事

  • プロバイオティクス
    • 乳酸菌・ビフィズス菌・ロイテリ菌などが腸内環境の改善に寄与
    • 納豆、キムチ、味噌などの発酵食品、サプリメント 
  • プレバイオティクス(水溶性食物繊維)
    • 善玉菌のエサとなって腸内環境の改善に寄与
    • 短鎖脂肪酸(酪酸など)の産生を促進し、バリアをサポートする可能性
    • 海藻、こんにゃく、オクラ、ブロッコリーなど
  • オメガ3脂肪酸
    • 抗炎症作用で腸粘膜の炎症を抑え、腸の健康に役立つ可能性
    • 魚の油、アマニ油、エゴマ油など
  • ビタミンD
    • 腸管透過性の改善に関与
  • グルタミン
    • 腸管バリアを改善する可能性
  • ビタミンA・ビタミンC・ビタミンB群
    • 腸粘膜や根本の免疫機能を支える重要な栄養素

生活習慣

  • ストレスを軽減し、自律神経を整える
    • 副交感神経が優位になることで腸の機能が高まる
  • アルコールを控える
    • 腸に直接的な炎症をもたらすため可能な限り避ける

まとめ

リーキーガット症候群は、腸のバリア機能が壊れることで異物が体内に漏れ出し、全身の炎症や不調を引き起こす状態を指します。

現代の食生活やストレス社会では、誰しも腸の負担が大きくなりやすい状況です。しかし、腸内環境を整える食事や栄養素の摂取、生活習慣の見直しによってこれを改善することはできます。

「なんとなく不調が続く」と感じている方は、一度ご自身の食事や生活習慣を見つめ直し、腸の健康に向き合ってみると良いかもしれません。

関連記事

原因になりうるものとして挙げた「グルテン」「乳糖」「カゼイン」については、以下の記事でそれぞれまとめています。

今回お伝えしたリーキーガット症候群に限らず、健康において必ず理解しておきたい成分であるため、ぜひ参考にしてみてください!

グルテンとは?健康への影響とその向き合い方
パンのもちっとした食感、ラーメンのコシ、ケーキのしっとり感。 私たちの食卓に日々登場する小麦製品の美味しさを支えている成分がこの「グルテン」です。 近年では、グルテンの体への悪影響や「グルテンフリー」という言葉を良く耳にするようになりました。 本記事では、グルテンの基本情報から、日本人に起こりやすい不調の背景、そして賢く付き合う方法について書いていきます。 1. 概要と基本情報 グルテン(Gulten)は、小麦、ライ麦、大麦などに含まれるたんぱく質の総称で、グリアジンとグルテニンという2種類が水と混ざることで網目構造を形成します。 この網目状のグルテン構造が、パンの膨らみや麺のコシといった特徴的な食感を生み出します。 * グリアジン(Gliadin):生地を伸びやすくする粘性を与える * グルテニン(Glutenin):弾力や噛みごたえを与える この組み合わせが、パンや麺に欠かせない食感と構造を作りますが、同時に消化しづらい性質を持つため、特定の人にとっては健康リスクにもなり得ます。 2. 体質・遺伝的背景 グルテンへの耐性は人によって大きく異なり、その差は
乳糖(ラクトース)とは? 健康への影響とその向き合い方
牛乳やチーズ、ヨーグルトといった乳製品。 ”健康のために” と摂取しているつもりが、「牛乳を飲むとお腹がゴロゴロする」「ヨーグルトでお腹が張る」といった経験はないでしょうか? それはもしかすると「乳糖(ラクトース)」が原因かもしれません。 本記事では、乳糖とは何か、体質や遺伝との関係、どんな不調を引き起こすのか、日本人が注意すべき理由、そして乳糖と上手に付き合う方法をご紹介します。 1. 概要と基本情報 乳糖(lactose)は、母乳や牛乳に多く含まれる二糖類で、ガラクトースとグルコースという糖が結びついてできています。 牛乳の甘さをイメージすると分かりやすいと思いますが、砂糖のような強い甘さではなく、優しい甘みが特徴です。 * グルコース(Glucose):脳や筋肉の主要なエネルギー源となる単糖類 * ガラクトース(Galactose):体内でグルコースまで変換される単糖類 消化には、小腸上皮で働くラクターゼ(乳糖分解酵素)が必要で、これが不足すると乳糖を消化できず、大腸での発酵を経てさまざまな症状を引き起こします。 2. 体質・遺伝的背景 乳糖を体内で分
カゼインとは?健康への影響とその向き合い方
″タンパク質も摂れて腸にも良い” と思って牛乳やヨーグルト、チーズを習慣にしている。 しかし「なんとなく胃もたれがする」「肌荒れが続く」「鼻炎や咳が長引く」といった経験はありませんか? それはもしかすると乳製品に含まれるタンパク質「カゼイン」が原因かもしれません。 この記事では、カゼインとは何か、体質や遺伝との関係、どんな不調を引き起こすのか、カゼインに注意すべき人、そしてカゼインと上手に付き合う方法をご紹介します。 乳製品に関してはカゼインだけでなく、乳糖(ラクトース)も注意しておきたい成分です。興味があれば以下の記事もぜひ読んでみてください。 乳糖(ラクトース)とは? 健康への影響とその向き合い方牛乳やチーズ、ヨーグルトといった乳製品。 ”健康のために” と摂取しているつもりが、「牛乳を飲むとお腹がゴロゴロする」「ヨーグルトでお腹が張る」といった経験はないでしょうか? それはもしかすると「乳糖(ラクトース)」が原因かもしれません。 本記事では、乳糖とは何か、体質や遺伝との関係、どんな不調を引き起こすのか、日本人が注意すべき理由、そして乳糖と上手に付き合う方法をご紹介します

精密栄養カウンセリングサービスのお知らせ

健康的な日々を送れるように取り組みたいと思いつつ、
具体的にどんなことから始めたらよいかが分からなかったり、
始めても続けられるか不安な方も多いかと思います。

私自身の経験とそこから得た知見を活かし、
より多くの方々の日々の実践や人生を支えていきたいと考え、
精密栄養カウンセリングを開始しました。

現在のお食事、生活習慣、お悩みなどをお伺いしながら、
具体的な改善アプローチのご提案やサポートをさせていただきます。

無料でのご相談も可能ですのでお気軽にご相談ください!

精密栄養カウンセリング | yuta884.com
精密栄養学の視点で食事と生活を整理するオンラインカウンセリングと、無料のお試し解析2種のご案内です。

Read more

2025-2030年版「アメリカ人のための食事ガイドライン」で示された指針を日本人向けに読み解く

2025-2030年版「アメリカ人のための食事ガイドライン」で示された指針を日本人向けに読み解く

新時代の「アメリカ人のための食事ガイドライン」 2026年1月8日、米国の食生活の基準となる「Dietary Guidelines For Americans(アメリカ人のための食事ガイドライン)」が発表されました。 https://cdn.realfood.gov/DGA.pdf ロバート・F・ケネディ・ジュニア氏やブルック・ロリンズ氏らの新体制によって発表された、今回の2025-2030年版ガイドライン。 資料冒頭から「我が国の歴史上、連邦栄養政策の最も重要なリセット」であると宣言されており、過去数十年間の政策や「標準的な米国の食生活」からの劇的な転換を目指しています。 These Guidelines mark the most significant reset of federal nutrition policy in our nation’s history. 米国は現在、約1億7,000万ドル(約250億円以上)

炎症を鎮め脳と血管を支える!オメガ3脂肪酸の効果とその摂取方法

炎症を鎮め脳と血管を支える!オメガ3脂肪酸の効果とその摂取方法

三大栄養素「タンパク質」「脂質」「炭水化物」の中に含まれる脂質。 この脂質は単にエネルギー源となるだけではなく、私たちの体の細胞膜やホルモンを作る重要な材料となります。 しかし実は日々摂取する脂肪の種類によって、私たちの健康に与える影響は大きく異なります。 今回は脂質(油)を構成する主要な成分「脂肪酸」の分類と、現代人に必要不可欠なオメガ3脂肪酸について詳しくお伝えします。 そもそも「脂肪酸」とは? 「脂肪酸」とは、脂質(油)を構成する主要な成分であり、私たちの体の細胞膜やホルモンを作る重要な材料です。 また、体内のエネルギー源として活用されるほか、その種類によって炎症を抑えたり、脳や血管の健康を維持したりといった働きを持っています。 脂肪酸の3つの分類 この脂肪酸は、その性質や構造によって大きく3つに分類されます。 飽和脂肪酸(Saturated Fatty Acids) * 主な食品 * バター * 肉の脂身などの動物性食品 * 特徴 * 常温で固体 * 効率の良いエネルギー源になる * 過剰摂取は血液中のコレステロールを

抗酸化と副腎機能を支える!ビタミンCの働きと摂取方法

抗酸化と副腎機能を支える!ビタミンCの働きと摂取方法

ビタミンCは、最も日常的に見聞きするビタミンかもしれませんが、実は摂取量となると、現代は特に不足しやすい環境にあります。 ストレスや慢性的な疲労、加工食品の多い食事になりやすい現代。 そんな現代において、このビタミンCの摂取はますます重要になっています。 今回はそんなビタミンCについて詳しくお伝えします。 ビタミンCとは? ビタミンCは、別名「アスコルビン酸」とも呼ばれる水溶性ビタミンです。 実は、ほとんどの動物は体内でビタミンCを合成できるのですが、人間は進化の過程でその能力を失ったことで、食事から摂取が必要な「必須ビタミン」として分類されています。(日常的に食事から十分摂取できていたために失った、など複数の要因・説があるようです。) 最大の特徴は、体内のあらゆる部位でダメージを防ぐ「強力な抗酸化作用」を備えていること。 この働きはストレス対策においても極めて重要で、「コルチゾール」と呼ばれるストレスから体を守るホルモンを合成する副腎では、他のどの臓器よりもビタミンCが消費されます。 ビタミンCの働き 強力な抗酸化作用 体内で発生した過剰な活性酸素を中和し、

エネルギー代謝と皮膚の健康を支える!ビタミンB7(ビオチン)の働きと摂取方法

エネルギー代謝と皮膚の健康を支える!ビタミンB7(ビオチン)の働きと摂取方法

我々の健康を支えているビタミンB群。 ビタミンB群は「ビタミンB◯(数字)」と名のつくものの総称で、どれも我々の身体にとって欠かせない必須ビタミンです。 今回は「ビタミンB7(ビオチン)」についてお伝えします。 ビタミンB7(ビオチン)とは? ビタミンB7は「ビオチン」とも呼ばれ、皮膚や髪の健康に深く関わるビタミンとして古くから研究されてきました。 (「ビオチン」が一般的な呼称なので、ここからは「ビオチン」と表記します。) 私たちの体内では、糖質、脂質、タンパク質の代謝を助ける「補酵素」として、エネルギー生成の根幹を支えています。 最大の特徴は、食事からの摂取だけでなく、「腸内細菌」によっても合成されるという点です。 しかし現代は、乱れた食生活や抗生物質の使用などによって、腸内環境のバランスが崩れやすく、体内での合成が滞ることによる不足が生じやすい栄養素でもあります。 ビオチンの働き ビオチンは、「エネルギー代謝」と「健康的な皮膚の形成」に欠かせないビタミンです。 エネルギー代謝のサポート ビオチンは、体内で糖質、脂質、アミノ酸がエネルギーに変換されるあらゆ