突如明かされたブラジル産ユーゲニオイデスコーヒー〜誕生の背景とその稀少性〜
こんにちは!
現在はタイ・バンコクにいます。
コーヒーショップをリサーチしていたところ、「ブラジル産ユーゲニオイデス」を扱っているコーヒーショップを発見。
超稀少なコーヒーの種である「ユーゲニオイデス」を聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれませんが、実は「ブラジル産ユーゲニオイデス」のコーヒーは、さらに興味深い背景があります。
この記事では、そんな「ブラジル産ユーゲニオイデス」のコーヒーについて書いていきます。
そもそもユーゲニオイデスとは?
ユーゲニオイデスとは、私たちが普段飲んでいる一般的な「アラビカ種」と呼ばれるコーヒーの祖先にあたる、非常に希少なコーヒーの種の名前を指します。
アラビカ種の祖先
近年の遺伝子解析によって、アラビカ種はユーゲニオイデス種とカネフォラ(ロブスタ)種の自然交配によって生まれたことが判明しました。
つまり私たちが毎日コーヒーショップで買って飲んでいる、ティピカやブルボン、ゲイシャなどを含む、アラビカ種のさらに親にあたる種です。
アラビカ種がもつ香り、甘み、果実感などの多くは、このユーゲニオイデス種の遺伝子に由来すると考えられています。
市場に出回るのはコロンビアのたった1つの農園から
2021年のワールド・バリスタ・チャンピオンシップ決勝戦において、1-3位までのバリスタ全員が、このユーゲニオイデスのコーヒーを使用していたことで一躍話題になりました。
また、基本的にほとんど市場に出回ることがないため、幻の品種とされています。
現在栽培が確認できているのは、私が調べる限り1〜2農園という情報のみで、これも定かではありませんが、片手におさまる数であることは確かで、さらにそのうち市場に出回るのは、コロンビアの著名な農園「Inmaculada Coffee Farms(インマクラーダ・コーヒー・ファームズ)」のみである、とされていました。
さらに、全く品種改良などが施されていないことから、病気・害虫に極めて弱く、栽培が難しいため、1本の木から1年間にわずか150g程度の豆しか栽培が出来ません。
まさに超稀少なコーヒーであり、私の体感でも「毎年わずか数ヶ月、そしてどこの国の、どこのロースターが買い付けたのか」をウォッチしていないと、お目にかかれることはまず難しい、という印象です。
天然の超低カフェイン種
このユーゲニオイデスをさらに特徴づけているのは、一般的なアラビカ種と比べてカフェイン含有量が約半分(約0.3〜0.5%程度)と非常に少ない天然の低カフェイン種であることです。
化学的な脱カフェイン処理(デカフェ)を行わずに自然の状態でカフェインを抑えながらコーヒーを楽しむことが出来るため、近年ではローリナ / Laurina(0.4〜0.6%)や、ラセモサ / Racemosa(0.3〜0.8%)などの天然低カフェイン種ともに、健康意識の高いコーヒー好きの人々からも注目されています。
ちなみに、アラビカ種のカフェイン量は約1.0〜1.5%程度、アラビカ種のもう片方の親であるカネフォラ(ロブスタ)種が約2.2〜2.7%程度とされ、アラビカ種はきれいに両親の中間程度のカフェイン量に位置しています。
これはまさに、カネフォラ由来とユーゲニオイデス由来の遺伝子が両方働いた結果である、といえます。
圧倒的な甘み
ユーゲニオイデスのコーヒーが人々を魅了しているのは、その圧倒的に甘いフレーバーにあります。
これは苦味や渋みのもとになるカフェインやクロロゲン酸などの成分が少ないことに起因しており、苦味・酸味ともに非常に少なく、ブラックでもまるで砂糖が入っているかのような強い甘みと、フルーティーなフレーバーが特徴とされています。
私が過去に飲んだ経験からも、全くと言っていいほど苦味や雑味はなく、かつ酸味も少なく、フルーツジュースのように甘い。かといってしつこい甘さではなく軽やかであり、かつその甘さが余韻として口に長く残るのも特徴的でした。
甘さがありつつも、砂糖のように舌に残る重さはなく、軽やかであるため、天然の甘味料である「ステビア」がフレーバーとして表現されています。
ブラジル産のユーゲニオイデスとは?
長くなりましたが、ここからが本題です。
ユーゲニオイデスのコーヒーに関して、今年2026年3月、コーヒー業界に大きなニュースが流れました。
「ブラジルのある農園でユーゲニオイデスを栽培しており、販売を開始した」と伝える記事がロイターから公開されたのです。
先んじて2025年11月にはブラジルのメディアが発表していましたが、世界的なメディアであるロイターが報じたことで一気に世界へと広まりました。
なぜ大きな話題となったのかといえば、先述のとおり、これまで市場に流通するユーゲニオイデスは、コロンビアのインマクラーダ農園によるロットのみであるという認識が、コーヒー業界の常識だったからです。
基本的に、ゲイシャ種をはじめ、超稀少なコーヒーの種子や苗木の流出にはどの農園も慎重であるため、インマクラーダ農園もおそらく厳重に管理していたはずです。
なぜ突如ユーゲニオイデス種がブラジルに現れたのか?
ブラジル・ミナスジェライス州カルモデミナスの農家 Luiz Paulo Dias Pereira Filho 氏が、運営する農園 Fazenda Santuário do Sul がユーゲニオイデス種を栽培しており、商業栽培と販売を拡大しようとしている、という情報が、2025年末にブラジル国内メディア、そして2026年3月にロイターが報じたことで、世界に広まりました。
Luiz Paulo Dias Pereira Filho 氏の経営する農園 Fazenda Santuário do Sul でのコーヒー栽培の歴史は200年以上に及びます。
彼は「ブラジルには良いコーヒーがないと言われ続けるのに疲れた。ゲイシャはゲイシャと、ウォッシュトはウォッシュトと比べるべきだ。」という考えから、2010年、この農園で世界的に評価の高い稀少品種を栽培する実験プロジェクトを始めました。
ゲイシャなどの品種をブラジルで栽培し、そのブラジル産のゲイシャと他の国のゲイシャを比較することで評価してほしい、ということです。
彼はゲイシャ、ラウリナ、SL28、Sudan Rume などの品種の栽培をはじめ、「ブラジルでも世界最高峰の品種を作れる」ことを証明しようとしたのです。
2017年、コロンビアからユーゲニオイデス種を持ち帰る
彼が2017年にコロンビアを訪れた際、初めてユーゲニオイデスという種に出会いました。
いくつかの種子を持ち帰り、当時は商業化する意図よりも純粋な好奇心から、ブラジルで6本の苗を植えたのでした。
(入手先がインマクラーダ農園だったかどうかは公表されていません。)
その後秘密裏に栽培を拡大
その後、彼のもとに訪れたとある顧客が「あなたの持っているものがどれだけ希少か分かっているか」と指摘したことをきっかけに、彼は商業規模での栽培を決断します。
ここから彼はしばらくユーゲニオイデス種を栽培していることを公表せずに栽培を拡大していき、最終的に5ヘクタールまで拡大しました。
先述の通り、病害虫に弱く、栽培が極端に手のかかるものであったため、彼は植物のモニタリング専任の従業員を雇い、毎日担当の農学者に報告を送らせる体制を組みました。
そこまでしても、収量は1ヘクタールあたりわずか2袋(60kg)程度。同じブラジルの一般的なアラビカが25〜50袋取れることを考えると、10分の1から25分の1程度の収穫量でした。
初の商業販売、そしてロイターの報道で世界に知られる
その後の試行錯誤を経て、安定的に栽培できるようになり、最初の商業ロットが、2025年、台湾、サウジアラビア、UAE の顧客に販売されました。
そして、2026年3月24日、ロイターが「ブラジルの農家が希少なユーゲニオイデスで1袋2万ドル近くを狙う」という見出しで報じ、これを機にブラジル内外のメディアが一斉に取り上げ、世界的に「ブラジル産ユーゲニオイデス種」が知れ渡りました。
今回の記事はここまで。
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